lotlotlot3-血脈の果て-
息があがっている。それを無理矢理整えた。そのせいか心臓が苦しがっているのがわかる。
「ちょっと、もう少し大人しくしろよ。」
胸を叩き、そう言う。すると心臓は言葉に従い、徐々にではあるが大人しくなっていった。そして、お楽しみの時間が幕を開ける。口上なんて必要ない。いきなりだった。
「char、char。」
信じられない。本当に一瞬だ。その一瞬で、山のように赤い実が集まった。
「ここら辺にある実、全部集めちゃったんじゃないか?」
実を頬張りながら、驚きの声を上げた。
「これなら、魔法とも対等に・・・いや、それ以上に渡り合えるぞ。」
気分がいい。今日の晴れ渡った空のようだ。
「でも・・・二回でこれなら・・・三回、四回って増やしたらどうなるんだろう?」
ただ、それらは思うだけだった。たった二回でこんなに強力なのだ。これ以上はさすがのヨダセンも、怖くて躊躇した。
試したい気持ちと怖い気持ち。シーソーのように揺れる。何回も、何回も揺れる。何十回と揺れ、やっと揺れは収まった。答えはこうだった。
「もう少し、もう少し研究してからにするか。」
それは言い訳なのかもしれない。とにかくヨダセンは、第三言を使うのを止めた。
まさか、すぐに第三言を使う事になるなんて思いもしなかった。
「じゃ、戻るか。」
第二言を試したら、早々に城に戻らねばならない。王子であるヨダセンが、あまり長く城からいなくなるのは好ましくないからだ。
その日は昼間から三日月が見えていた。こんな日をヨダセンの国ではカルサと呼んでいた。月と太陽は本来顔を合わせてはいけない。そう考えられていた。だから、“注意しなければいけない日”と思われていた。
「今日はカルサかぁ。なんか、気味悪いな。」
月が顔を出してから太陽は機嫌を悪くしたかのように雲に隠れ、どんよりとした雰囲気に変わっていた。
月はヨダセンの後をつけてくる。その姿はこれから起きる出来事を、せせら笑っているかのようだった。
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