lotlotlot3-血脈の果て-
「この感触も幽霊?」
アイワイは聞く。
「う、うわ・・・かっ。」
恥ずかしくて何も答えられない。
「イバーエ君、私もお父様も本物よ。幽霊なんかじゃないわ。」
そう言いながら抱きしめるのをやめた。少し名残惜しかったが、その方が良かったのかも知れない。イバーエは首まで赤くなっている。額には汗が滲み、とても普通ではいられない。
「すまなかったね、イバーエ君。実は訳あって・・・右手を失ってしまったんだよ。君が見たのは言術で創った幻の右手だ。だから、通り抜けてしまったんだ。」
「えっ?」
「つい、この間ね。だから、まだ右手を失ったって実感がないみたいで。さっきみたいになってしまうの・・・。」
「どうして・・・?」
その問いには二人とも答えなかった。まさか、本人を目の前にして、「お前のせいだ。」とは言いにくい。しかし、それはイバーエに「お前のせいだ。」と言っているのも同じだった。こんなところだけは、イバーエは勘が良かった。
俯き言った。
「僕のせい・・・なんだね?」
やはり答えはない。
「ごめんね・・・。ごめんなさい・・・。ほ、本当に・・・ごめんなさい・・・。」
鼻水は垂れ、口まで繋がった。涙でシーツは汚れた。嗚咽が鳩時計の鳴き声のように、いつまでも続いた。
「気にするな。言術なり、魔法なり研究している者なら、こう言う風になる覚悟は当然している。それが偶々今回だったってだけだ。それだけこの世界は、まだまだ謎が残されていると言う事じゃ。」
「そうだよ。お父様なら・・・右手を元に戻しちゃうくらい出来るかも知れないよ。謎が多いって事は、そんなチャンスも残っているって事だよ。」
本来ならエーマリリスが落ち込むところを、なぜか励ましていた。なんとも奇妙な光景だ。しかし、それはそれだけイバーエが精神的に未熟であると言う事実とも受け取れた。
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