lotlotlot3-血脈の果て-
研究者の魂
早まる鼓動に目を覚ました。
「はぁ、はぁ・・・。」
目を覚ましたのはイバーエだった。周りを見回す。少なくともさっきまでいた森ではないのは明らかだ。その証拠に大きな窓の隣には、大きな鏡が置かれている。窓から覗く月が映り込み、イバーエの目には二つの大きな月が見えた。
「この場所って・・・?」
見覚えのある景色だが、考えようとすると頭が激しく痛む。
「痛っ。」
さっきの悪夢のせいなのだろうか。ふと、そんな考えが頭をかすめる。
「さっきの夢って・・・。なんだろう・・・妙に現実的な・・・。」
第三言を唱えた時の自分と、夢の中のヨダセンを重ねた。
「イバーエ君。目が覚めたか?」
名前を呼ばれた。その声はエーマリリスだった。後ろにはアイワイの姿も見える。
「エーマリリスさん?・・・アイワイさん?」
夢とは対照的に、二人の顔を見てもまるで現実感がない。
「どうした?そんな顔をして。久しぶりの再会をもう少し喜んでもよかろう。」
「ほ、本当に・・・エーマリリスさんですか?」
「あぁ、もちろんだとも。」
そう言って無意識に右手を差し出した。アイワイは慌てて注意するが遅かった。
イバーエは差し出された手を掴もうとした。が、通り抜けてしまった。
「えっ。」
こんな風になるのは、俗に言う幽霊くらいしか知らない。イバーエはまだ自分が悪夢の中にいるような感覚に襲われた。
「うわあああああ。」
叫び声の後、こう付け加える。
「ゆ、幽霊だ!」
「いや、イバーエ君違うんだよ。」
「ち、違うもんかっ。だって今、手が通り抜けたじゃないか。」
アイワイはイバーエを抱きしめた。やわらかい。
「えっ、あ、うっ。」
女子に抱きしめられるなんて、今まで経験した事はない。イバーエの顔はこの世のどんなトマトよりも、赤く染まった。
< 53 / 87 >

この作品をシェア

pagetop