愛の雫
もちろん、返事なんてしない。


陽子さんに名前を呼ばれただけでも嫌なのに、わざわざ返事や会話をするなんて有り得ない。


それなのに…


「希咲ちゃん?」


ドアの向こうからは、何度も耳障りな声が聞こえて来る。


陽子さんに名前を呼ばれる度に、自分の名前すら嫌になっていく。


聞こえない振りをしていても苛立ちが募って、眉を寄せながら深いため息を漏らす。


あたしは、夜中のうちに勝手に印鑑を捺した履歴書をバッグに入れ、ドアを開けた。


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