愛の雫
凪兄から逃げるように、いつもよりも早く歩く。


足が縺(モツ)れそうになって、いつの間にか自分が走っていた事に気付いたけど、すぐに息が苦しくなって立ち止まった。


「希咲!」


程なくして、自転車に乗った凪兄に追い付かれてしまった。


「俺、待っててって言っただろ!」


「ごめん……。ちょっと急いでたから……」


顔を覗き込みながら言われて、苦しい言い訳を零す。


だけど…


凪兄にこんな言葉が通用するハズが無いのは、よくわかっていた。


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