愛の雫
早苗に電話を掛けようとしたけど、何をどう話せばいいのかわからなくて…


その戸惑いが、縋り付くように伸ばした手を止めた。


心が痛くて、胸が苦しくて、泣きたくないのに涙が勝手に溢れ出して来る。


凪兄には、こんな気持ちは言えない。


『好き』、なんて告(イ)える訳が無い。


だけど…


内緒の恋心が胸の中で苦しいくらいに暴れては、『凪兄の事が好きなんだ』って訴える。


どうしようもない感情を抱えたあたしの切ない涙は、一晩中止まらなかった――…。


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