愛の雫
「何も考えずにいつもみたいに声を掛けたら、広之さんが泣いてて……」


切なげな表情を見せた陽子さんは、一度瞼を閉じてから眉を寄せて微笑んだ。


「しばらくして、広之さんが夜空を見上げながらこう言ったの。『今日は妻の誕生日なんだ』って」


「ママの……?」


「広之さんがあまりにも悲しそうに笑うから、私まで涙が零れちゃったわ……。その時に思ったの、『広之さんの傍にいたい』って……」


そこまで話し終えた陽子さんは、何だか申し訳なさそうにしているようにも見えた。


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