愛の雫
「だけど、これだけはお願い……」


小さく呟いた陽子さんは、深呼吸をした。


「広之さんを責めないで」


キッパリと放たれた言葉に、目を小さく見開く。


「広之さんは、何よりも誰よりも希咲ちゃんの事を大切に想ってるわ。希咲ちゃんが初めて無断で外泊した時なんて、一晩中起きてリビングで待ってて……。その後も希咲ちゃんが帰って来ない日は、いつも夜遅くまで希咲ちゃんの事を待ってたのよ……」


そこまで聞いた時、あたしの瞳からとうとう涙が溢れ出してしまった。


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