愛の雫
「まぁ、結局は告白しなかったんだけどね」


「え?どうして?」


キョトンとしながら訊いたあたしに、早苗は一呼吸置いてから続けた。


「先輩の気持ちに気付いたから」


「凪兄の気持ち……?」


「うん。秋山先輩にはね、ずっと好きな人がいたの。バスケ部じゃ結構有名な話だからわりと皆知ってて、しかも男バスの先輩が『秋山はかなり長い間片想いしてる』って言ってた」


「そっか……」


返す言葉を見付けられなかったあたしは、そう零すのが精一杯だった。


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