愛の雫
「あたし、そろそろ行くから」


「あ、希咲ちゃん!」


リビングを出たあたしの後を、陽子さんが足早に付いて来る。


「これ、お弁当なんだけど……」


「だから、前にもいらないって言ったじゃん」


差し出されたお弁当の包みに視線を遣ってため息をつくと、陽子さんが少しだけ寂しそうに微笑んだ。


「でも、せっかくだから持って行く」


仕方なくぶっきらぼうにそれを受け取ったあたしは、ついでにもう一言だけ付け加える。


「……ありがとね、お母さん」


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