わたしの、センセ
眼鏡の男性が口を緩めて、にやりと笑った

「センセを知ってるの?」

「ああ。よく知ってる。この結婚、あいつより俺のほうが怒りを感じてるんだ」

「はい?」

「だから、さっさとあいつのところに行け。外でバイクに乗って待ってる」

「あの…」

「君が式場から脱走してくれないと、俺の暴れ甲斐がないんだ。さっさと着替えて、外に行け。決して後ろを見るなよ」

男性が楽しそうに笑う

くくっと喉の奥を鳴らすと、部屋を出て行った

暴れ甲斐って…あの人は何をしようとしているの?

手の中にある携帯が震えた

メールじゃなくて、センセから電話だった

わたしはゆっくりとボタンを押すと、耳にあてた

「はい」

『さくら、迎えに来たよ』

「そっちに行ってもいい?」

『もちろん。待ってるよ』

わたしは電話を切ると、ドレスを勢いよく脱ぎ捨てた

着てきたピンクのワンピースを頭からかぶると、携帯だけを握りしめて控室を飛び出した

センセ…やっぱりわたし、センセと離れたくない

センセと一緒になりたいよ

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