わたしの、センセ
エピローグ ふたり
―さくらside―

「よしっ、できたぁ!」

小さなベランダに、洗いたてのセンセのワイシャツを引っ掛けると、わたしはにっこりと笑って頷いた

太陽がまぶしい

クーラーのない蒸し暑い部屋だけど、広い屋敷にいた頃より毎日が楽しくて充実してる

やったことのないことばかりで、センセに教えてもらって…やっと慣れてきたところ

料理も、洗濯も、掃除も……初めての経験で、最初はセンセが全部やってくれてた

網戸を閉めたわたしは、今夜の夕ご飯は何しよう…なんて考えながら、冷蔵庫に足を向けた

途中で、携帯が鳴って、意識がそっちに向いた

赤い携帯が鳴ってる

センセだっ

わたしは携帯に飛びつくように、テーブルの上にある携帯を手にとった

『今日は早く帰れそうだよ。夕食は一緒に作ろう』

センセのメールを読んで、わたしは自然と笑みが顔に広がった

センセは、小山内さんの会社に就職した

朝は早くに出勤して、夜遅く帰ってくることが多くて……それでも、小山内さんの配慮でたまに早くに帰ってきてくれる

『夕食は何にする? 買い物に行って、材料を買っておくよ』

わたしはすぐに返信メールを送った

『僕が仕事の帰りに買って帰るから。さくらはゆっくりしてて』

センセから返事がきた

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