わたしの、センセ

さくらside

白いウエディングドレスに身を包んで、わたしは真っ赤な携帯をパタンと閉じた

センセとおそろいの携帯電話

大好きなセンセと唯一の繋がり

これだけは譲れない

携帯電話だけは、捨てられないよ

センセを愛した唯一の証拠だから

誰にも触らせたくないし、触れて欲しくないの

鏡の中に映る自分の顔を見て、自嘲した笑みを送った

綺麗でしょ

わたし…綺麗にして貰ったんだよ

一生に一度の結婚式だからって、両親がお金をかけてくれた

でも全然、嬉しくない

だってこんなに綺麗してもらっても、見てくれるのはセンセじゃないもの

センセが見てくれないなら、わたしはどんな格好をしても嬉しくならないよ

逆にセンセが見てくれるなら、裸だっていいくらい

わたしたちには何もなかった

将来の保障なんて全く無くて、あったのは『センセが好き』っていう気持ちだけ

センセは感情だけで突っ走れるほど若くないって苦笑してたね

でもね、センセ

わたしには感情しかないんだよ

『好き』っていう気持ちしか…ないの

他に何もいらない

だって他に何も持ってないし、センセみたいに自分でお金を稼いで、生活しているわけじゃないから

ごめんね

センセにはいっぱい迷惑をかけちゃった

本当にごめんなさい

わたしはぎゅっと真っ赤な携帯を握りしめた

「大好きだよ、センセ」

でもわたしは、今日…違う男のモノになります
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