わたしの、センセ
―さくらside―

少し大きめな鞄の底に、着替え用の下着を入れると、上に洗顔セットを乗せ、財布やハンカチで下の荷物が見えないように覆った

小さな旅行鞄も持ってるけど、それじゃあ…なんか『いかにも』って感じ過ぎて、執事にバレちゃうんじゃないかってヒヤヒヤした

友達の家にお泊りする…という理由を言うだけでも、すごく緊張して、声が震えたというのに

センセと過ごす……男の人と一晩一緒にいる……なんて執事に知られたら、大変だ

パパの耳に入って、際限なく怒鳴られて、きっと頬を殴られる

執事が、わたしの恋に応援してくれるような人ならいいけど

それはどうだか、わからないから

うっかり口を滑らせて、その情報をパパにでも流されたら…と、思うと屋敷にいる人全員が敵に見えてしまう

誰にも言えない関係

センセとわたしの関係は、誰にも言っちゃいけない

センセをスキな気持ちは、誰に知られてもいい

だけどセンセと会っている事実は、誰にも知られてはいけない

センセ、早く会いたいな

センセと話がしたい

肩を寄せ合って、他愛ない会話をして、ときどき笑って、ときどきじゃれ合って…同じベッドで眠る

朝になって、キスをして…センセとの時間を堪能してから、センセは仕事へ

わたしは家へ帰る

そんなデートにしたい

センセは、今日のデート、楽しみにしてくれているかな?

わたしは凄く楽しみだよ

センセと夜を過ごせると思うだけで、胸がドキドキするの

どんな夜になるのか…想像しては、顔がニヤけたり、また想像しては落胆したり、その繰り返しで、あまり夜も眠れずに朝陽を感じた

寝不足だけど、今は全然眠くないの

だってセンセに会える日だと思うと、逆に興奮してる

嬉しくて、時間ばかり見つめて、たいして時間が経過してないことにしょんぼりしてる

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