わたしの、センセ
僕たちは、無駄に長い付き合いだったから…気づいてるはず

このドアを開けて、僕が仕事に行けば、真央は必ず涙を流して泣くのだろう

今は、僕に気づかれまいと必死に堪えている

僕に、これ以上、迷惑をかけまいと頑張ってるんだ

ごめんな

真央に無理させてる

真央には笑ってもらいたいのに、僕がそばにいることで苦しめているのかもしれない

「真央…ごめん」

僕は考えるよりも先に口が動いて、謝っていた

腕を持ち上げると、真央の温かい頬にそっと触れる

真央が瞼をおろすと同時に、涙をほろりと流した

真央が、頬に触れている僕の手を、軽く握りしめてくる

「いいよ」

真央がぼそっと呟く

僕は真央の肩を抱きしめると、胸の中に顔を埋めた真央の額にキスをした

「ごめん。真央を泣かせたいわけじゃないんだ。でも……」

「わかってる。悠真は優しすぎるよ」

「真央」

僕の胸を真央が押すと、にっこりと微笑んできた

「ほら、行かないと。仕事に遅れちゃうよ!」

「そうだな。じゃ、行ってくる」

「行ってらっしゃい」

僕は真央に背を向けると、玄関を出た

ドアを閉める間際、『じゃあね、悠真』と真央の声が聞こえた
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