はつおもい
1章 初想い
1話 やさしい声
こつこつこつ。
音をたてて黒板に書かれていく
「音楽祭について」という白い文字を
私はぼんやりと目で追いかけていた。
高校1年生の秋。
私が入学した年から
お試しで「音楽祭」ができてしまった。
市民会館を借りての合唱コンクール。
評判がよかったら毎年するみたい。
でも私は、音楽祭って好きじゃなかった。
歌うことが嫌いなんじゃない。
人前で何かをするっていうことが
すっごくすっごく苦手だった。
音楽祭で歌う曲名が黒板に大きく書かれている。
その文字を後ろにして
学級委員長の女の子がぽそぽそと説明をしていた。
聞いているのか、いないのか。
クラスのみんなは近くの席の友達と
おしゃべりをして盛り上がっている。
私も耳だけで説明を聞きながら
手元の歌詞プリントに目を落とす。
「この気持ちはなんだろう」
そんな言葉から始まる合唱曲。
青春時代のもどかしさを表した曲。
それは音楽の先生から説明されたもので
私にはその歌詞の意味は全然わからないものだった。