ゲイな彼と札束

タバコの灰を灰皿にポンと落とした。

手元が狂って少し灰をこぼしてしまった。

今までになくドキドキしている。

こんな状態が、本当に『恋を飛ばす』といえるのか疑問だ。

寝室の方から何やら音が聞こえ始めた。

あたしの携帯が鳴っているらしい。

片足で移動するのは面倒だし、というか立ち上がることすらダルい。

ケトルから湯が沸く音もし始めた。

あたしは着信よりもマモルのコーヒーを優先することにした。

こちらに来たマモルが鳴ってるよ、なんて言わないように、リモコンでテレビをつけてみる。

着信音はテレビの音に書き消された。

「お待たせ」

「サンキュ」

ペアカップを持って来たマモルが隣に座る。

この距離感が心地いい。

あたしはタバコを灰皿に押し付けて熱いコーヒーに息を吹きかけ、火傷をしないように注意しながらゆっくりと味わって飲んだ。

テレビにはジョージが起用されている、クールな車のCMが流れている。





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