†Dragon Guardian†

「――壱加が私に頼み事
なんて、珍しいわね?」


突然電話で呼び出された
紗奈恵は、壁に寄りかか
った壱加を一瞥しながら
口を開いた。


「わざわざすまねぇな」

「別に構わないんだけど
弥嘉には伏せたい事?」

「見てくれりゃ分かる」


壱加はそう言って、徐に
部屋の扉を開いた。


「――――!!!!!?????」


するとそこには、相変わ
らず光を映そうとしない
両眼で呆然と外を見やる
弥嘉の姿があった。


「弥……嘉……なの?」


あまりの痛々しさに彼女
は思わず声を震わせた。


「行方不明中のコイツの
ダチの事を調べに図書館
に行ったらこうなった」

「最近、あの子が必死に
なって手掛かりを探して
いた幼なじみ……よね?
何かあったのかしら?」

「どんなに知りたくても
アイツがあの調子だから
聞くに聞けねぇし……」


そう言い終わらない内に
彼は血が滲みそうになる
ほどに唇を噛み締めた。


「――それとなく事情を
聞き出せってこと?」

「いや、それはしなくて
いい。その代わり悪ぃん
だけど俺がこっちに帰っ
てくるまでアイツの傍に
いてやってくんねぇ?」


それを耳にするや否や、
紗奈恵はイタズラっ子の
ような笑みを浮かべた。


「へぇ~結構大事にして
くれているみたいね」

「…………うるせぇ!!」


どこか含みのある彼女の
言葉に、壱加は不覚にも
顔を紅潮させながら実に
ぶっきらぼうに答えた。
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