彼は甘くてほろ苦い
離れ離れになって
裕と離婚して。
お腹の中の赤ちゃんは日に日に育っていって。
あたしは実家の自分の部屋にいた。

トントン
誰かがあたしの部屋のドアをノックする。

「どーぞ」
あたしがそう言うとそこには思いがけない人がいた。

「よう。久しぶり」
そう言うのはあたしの秘密を知っている陽の姿。

「なんで来たの?」
あたしは冷たく聞いた。
「せっかく来たのにそんな冷たくすんなよ・・・。」
「なに?優しくされたいわけ?」

裕と離婚してから、あたしは明るくすることがなかった。
表情もあまり変わらずいつも冷めた目をしていた。

「まあいーや。ところでさ、お前最近学校来てねぇじゃん。どうしたのかなーってさ。」
子供がいて行く馬鹿がどこにいんのよ。

「・・・できたから。」
「はあ?なに?」
「子供!できたから・・・!」

「・・・はあ!?子供!?だから実家にいるわけ?」
こいつ・・・。
いちいち聞いてきやがって。
「裕とは離婚した!だから実家にいんの。なんか文句あるわけ?」
「あ、いや・・・。なんでもないっす・・・。なんか実優強くなったな。」
強くなった・・・?
そんなこと言われたことない。
強くないんだよ。
弱いからこんな部屋にいることしかできないんだ。
< 70 / 77 >

この作品をシェア

pagetop