美人薄命


「私、この椅子があれば幸せかも。」


誰に言うわけでもなく何気なく呟いた。


「…妬けるな。」


「えっ!?」


まさか聞いてるとは思わなくて驚いて隣を見るけど、春人くんは何もなかったように本を見ている。


「ねぇ、今何て言ったの?」


私が聞いても彼は本から視線を外さず何も答えてはくれない。


「ねぇってば…」


知らんぷりをしている彼に私はもう聞くのを諦めた。


「…私、春人くんの事嫌いじゃないよ?」


彼が視線を上げてこちらを向く。


「…真似すんなよ。」


言葉は怒っているけど彼の表情はとても優しいものだった。


「ふふ、嫌いじゃない!」


「俺は、好きだけど。」


不意打ちの言葉に一瞬息が止まる。


にやりと笑う春人くんに返す言葉が出てこないまま私の視界は狭まり、そのまま目を閉じた。






 End


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