側にいる誰かへ

4.勝敗

葬儀が終わった後も俺は2日間徹の家にいた。

一人になった徹の母をなぐさめるために。

徹の事以外考えられない自分。

今の俺には、徹以外のものはどうでも良かった。

徹との学校生活。
徹と旅行に行った事。

彼女は俺が話す徹の思い出話をただ笑顔で聞いていた。

その笑顔が俺の唯一の救い。

きっと徹も彼女の笑顔を望んでいるはずだから。

学校なんてどうでも良かった。

徹が死んだのに授業なんて受けたくなかったし、

徹がいないあんな場所に行きたくもなかった。



一つだけ気掛かりなのは雅樹の事。

雅樹…。

俺達三人はいつまでも親友だろ。

通夜と葬儀の時、雅樹の顔を見かけた。

声をかけてきた雅樹に俺は「徹の母をなぐさめる事。この家にしばらくいる事。」を伝えた。


雅樹は俺の話を聞いていたが、しばらくすると俺のもとを離れていった。

雅樹は何も言わなかったが、その時の顔には、明かに不満の色が表れていた。

雅樹…。

お前は俺と同じ考えだろ?

俺は俺の中の雅樹に問いかける。

あれ以来、雅樹とは連絡をとっていない。

この家にも来ていない。

今は雅樹の気持ちがわからなかった。

徹のためにできる事を全部するのが親友じゃないのか?

俺は自分の行動に疑問を抱き始めていた。

俺はしばらく考えていたが、ふいに徹の母が話しかけてきた。


「富塚君。」

「はい。」

「明日は学校に行ってね。君が自分の人生を棒にふったら私、あの子に申し訳がたたないから…。」

「でも俺は学校なんて…」

「わかってる。でもお願い。私は大丈夫だから。私も頼るだけじゃ駄目だから。働く事を考えないと。」

彼女の突き放す言葉に俺は少し寂しさを感じる。

自分を否定されているような。

頼ってほしいような。

俺は彼女の言葉に答える。

「大丈夫。明日は必ず行くよ。」

俺は彼女のために無理に笑顔を作る。

俺はまだ気づいていない。

富塚は彼女の唯一の理解者。

彼女は富塚の唯一の理解者。

お互いの寂しい心は二人をどうしようもなく引き付けていた事を。

< 15 / 52 >

この作品をシェア

pagetop