側にいる誰かへ
俺が目を覚ますとそこは病院のベッドの上だった。

俺は体を起こそうとする。

痛…。

俺は胸を押さえる。

そうか、俺は撃たれたのか。

誰もいない病室。

ふいに思う。

寂しい…。

あんなに一人になりたかったのに。

病室のドアが開く。

そこには、両親の顔。

「看護婦さん。」

父が叫ぶ。

そうか戻ってきたんだ…。

俺は奇跡的に命を取り留めた。

出血は激しかったが、弾が臓器に当たっていなかった事が幸いしたらしい。

医者は奇跡だと言っていた。

不思議だな…。あの時、俺は死んだと思ったのに、今はこうして生きている。

あの時…。

最後に感じたのは、今まで自分を支えてくれたたくさんの人達。

どんなにつっぱっても。

どんなにムカついても。

結局一番大切なものは、

俺にとって、側にいる誰かなんだ。

あの夢のように…、

昔の俺のように…、

誰かを守れる人間になりたい。

俺は自分の横を見る。

そこには両親の笑顔。

ありがたい…。

俺は笑った。



全治二ヶ月。

と言われたけど、俺は一ヶ月で退院した。

俺はまだ完治しきれていない胸を押さえながら道路を歩く。

やっぱり無茶しすぎなかな…。

俺はとあるマンションの前につく。

二階に上がると、そこには田中と書いた表札があった。

戻れるなら戻りたい。

チャイムのないその一室を俺はノックする。

昔のように…。

「はい?」

無愛想で聞き慣れた声。

そこから出てきたのは雅樹の姿だった。

俺達は見つめ合う?というよりガンを飛ばしあう。

「上がれよ。」

雅樹が呟く。

「ああ…。」

和室の真ん中にあるちゃぶ台を挟み、俺達は向かい合う。

雅樹が台に置かれたお茶を飲む。

俺もそれをまね、台のお茶を飲む。

「見たよ。」

「え?」

「ほら。何だ、新聞。」

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