それでも君と、はじめての恋を


「ていうか見えてないから。まぁ、桃井は分かんないけど」

「葵ぃぃい!!」


コーラを飲んでいたモモが軽くむせて、あたしの体温は急上昇する。


顔から火が出そうになっていると、ゲホッと咳き込んだモモがあたしの顔をチラリとうかがった。


「や、見えてない」

「……」

「見えてないって」


モモは何も悪くないのに、睨んでしまう。


だって、あの距離で見えてないっていうのもおかしい話だと思う。思いっきり右足掛けたんだもん。


見えるでしょ……普通。見えたでしょ!? 見えちゃったんでしょう!?


「忘れてください」

「や、だから見えてな……」

「忘れて! マジで忘れて! とにかく今すぐ忘れて!」


モモが困った顔をして、見えてないと言ってるにも関わらず、あたしはバカのひとつ覚えみたいに忘れてと言い続ける。


そんな様子を楽しげに見る葵と純は、まるでこうなることを予想してたみたいにチャイムが鳴るまで口の端を上げていた。
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