それでも君と、はじめての恋を
「モモ、知ってたなら教えてよ!」
「優木から聞いてるかと」
いや、聞いてないよね!
バシッとモモの腕を叩くと、森くんは茶色い髪を揺らして笑う。
「まあ付き合ってるのは兄貴だから。俺は別に葵ちゃんと仲良いわけじゃないしねー。家でも会ったことないし、お互い顔だけぼんやり知ってる程度?」
うん、葵も同じこと言ってた。てか、申し訳ないけど特に話題に上がったこともなかったよ。
でも葵の彼氏の弟が、モモの友達か……ていうか。
「何で友達? いつから?」
聞くと、モモは森くんを一度見てから首に手を当てる。
「話し掛けられてから」
だからソレがいつの話って聞いてるのよあたしは!
「俺がねー、興味心で渉ちゃんと付き合ってんの?って聞いて、俺葵ちゃんの彼氏の弟だよーって。な?」
頷くモモの言葉足らずはいつものことで、代わりに森くんが付け足してくれる。
「最初はビビってたんだけど、話してみたら案外普通だからさー。そっからちょくちょく話すようになって。渉ちゃんがここで告った時には、もう普通に友達だったよ」
まるで何てことないみたいに話す森くんに、あたしは少し恥ずかしくなった。