それでも君と、はじめての恋を


冷たい?って、聞いた?

別に何てことない会話なのに頭の中で繰り返したのは、めずらしくモモが話を拡げたとか、まさか気にしてくれてるのかな、とか。そんなことばかり思い浮かんだから。


「優しい」

「……」

にこにこと笑うあたしにモモは微細に眉根を寄せて、解せないといった様子。


「手のこと聞いて……や、いいけど」


言い掛けて、何か察知したのか話題を放り出すモモに口の端を思う存分上げる。


「冷たいけど、冷たい?って聞いてくるモモが優しいから、平気」

「……」

「それにそこまで冷たくないよ」

「分かった」

「夏だったらちょうどいいと思うし」

「……」


黙った。ていうか逃げた。

あたしではないどこかを見るモモの手を軽く引っ張って、彼の視線を誘導する。


「あたし体温高い方だから、冬になればちょうどいいでしょ?」


思い切り眉を寄せて唇を結ぶモモに笑みを向けるあたしは、きっと意地悪そうに見えてるのかもしれない。


「ね? そうでしょ?」

「あー……分かった。分かったから」


黙ってと言いいたげなモモは気恥しそうにまたあたしから目を逸らす。あんまりいじめると可哀相だから口は閉じたけど、やっぱり頬は緩んでいた。



手を繋いでいられたらいい。夏も、冬も。


冷たすぎず、熱すぎず。ふたりの温度が重なって、ちょうどいい温もりになれたら。


そんな恋人でいられたら、いいな。
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