それでも君と、はじめての恋を


「湊ちゃんに返事書くね」


駅の改札を通ってホームに立つと、あたしはそう言ってモモを見上げた。電車の到着を知らせる駅員の声がスピーカーから流れる中、モモは小さく頷くだけ。


……何て書こうかな。あんまり長いのもアレだし、お礼くらいでいいかな。


到着した電車に乗り込んで、いつも通り難なく座席に座ることが出来た。ふと、繋がれた手からか、左半身からか、何とも言えない空気が伝わって来る。


「モモ……顔が怖い」

「……元から」


フッと笑みを零してしまったのは、きっとモモが電車内で手は繋いだままでいいのか、離した方がいいのか図りかねてるからだと思う。


「今、返事書く」


そう言うと、するりと離れるモモの手はすぐさまズボンのポケットに逃げ込んでいった。可笑しい。ていうか、面白い。


手を繋ぐ前はあたしの方が緊張してたくせに、ってここに葵がいたら言われそうだけど。



カバンの中から手帳とピンクのボールペンを取り出したあたしは、手帳のフリーメモの部分に文字を走らせる。


数行書いてから丁寧に千切って、ハートの形に折り畳んだ。中学や高校で友達とやりとりした時にいくつか覚えた折り方のひとつ。


「はい。湊ちゃんによろしく」


ハート型に驚いたのか何なのか。モモは少し目を見張ってから、受け取ってくれる。


……そんなジッと見られると、ちょっと下手くそなのがバレるじゃん。


カタンカタンと揺れる電車の中でモモはしばらく手の中のものを見つめて、チラリとうかがようにあたしを見た。
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