それでも君と、はじめての恋を
「読んでいい?」
ダメに決まってるでしょう!
「ひとりで読んでね。って湊ちゃんに言っといてね」
不満そうな顔をしてもダメなもんはダメです。
渋々といった感じで手紙をポケットにしまったモモは、警戒してるんだろうな。まさか妹がプレゼントを忍ばせていたとは思わなかっただろうし……。
「今度、湊ちゃんに逢いたい」
ソファーの背もたれに深く寄り掛かりながら言うと、モモはあたしを見る瞳を少し和らげて。
「喜ぶ」
なんて言うから。3人で遊べる日も近いかもしれないな、とか思ったりして。モモの下車駅に着いた頃には、まあいいかと思い直していた。
「手紙読んでもいいよ。湊ちゃんの後になら」
立ち上がったモモにそう告げて、返事も聞かずに手を上げる。
「また明日ね」
ゆらゆらと手を左右に振ると、モモは「またね」と返して電車からホームへ降りた。
桜……と、ピンク色。
ひらり、ひらり。控えめに宙を舞う数枚の桜の花びら。その中でモモが振り返って、電車のドアが閉まる。
「……」
言葉も聞こえず笑顔を向けられるわけでもないけれど、発車していく電車を見届けるモモに頬が緩んだ。
あ、また。
胸の奥がジワリジワリと熱くなる。浮かんでは弾ける炭酸水の泡みたいな、そんな感覚。
色を付けるならやっぱり、ピンクだろうな。ピンク色の髪したモモだから、ピーチで。攻めが弱いモモだから、微炭酸だよね。
そんなくだらないことを考えて、おかしくなって、ひとりコッソリと笑った。