それでも君と、はじめての恋を

▽斜め下33度からの横顔



5月中旬、あたしが通う高校の2年生は今日から2泊3日の林間学校。

朝10時にバスで学校を出発、1時間半ほどバスに揺られて大きな食堂で昼食をとったあと、近くの文化センターで開校式を終えて再びバスでお世話になる旅館に移動した。


各自割り当てられた個室に荷物を置いて旅館裏に召集された生徒達は今、林なのか庭なのかよく分かってないけど、我が校の名前が大きく書かれた看板のある場所に植樹をさせられている。


「やっぱ純ってモテるんだ……」


ざくざくと小さなスコップで土を掘りながらも、あたしの目線は5メートルほど先に佇む純に向けられていた。


「渉、掘れてない。それじゃ刺してるだけ」

「え? あ、ああ。ごめん」


隣にいる葵は軍手をはめた手で土をかき上げて、ここを掘れと指し示してくる。


「モテるっていうか、純が女子たちを弄んでるだけでしょ」

「うーん。どっちかっていうとそんな感じ」


でもやっぱり、女の子が寄ってくるんだからモテるって言えるよなぁ。


穴を掘りながらチラリと純を見れば、まだ5~6人の女の子に囲まれていた。

楽しそうというか嬉しそうというか。

とにかく純も女の子たちも笑顔は絶えないし、女の子の明るい声が聞こえてくるようで。


あまり認めたくないけど、校内で1番モテるのは純だと思ってる。女子に1番恨まれてるのも純だろうけど。


「ていうか働けよアイツ……!」


女の子に囲まれる純を見てうざったそうに言う葵の背後に、モモの姿を発見。


ああジャージ姿でもカッコイイ……!


他の男子や純なんかよりも一際輝いてる! モモに気付いた人がやけに素早く道を開けるのは気にしちゃダメ!


「ありがとうモモッ! 重かった?」

「……普通?」


自分よりも少し高い背丈の苗木を持ってきてくれたモモは、静かに土の上に置いて背筋を伸ばす。


「これもっと掘ったほうが良くない?」

「だね。もっと小さいの植えるかと思ってた」

「……」


葵の提案に同意していると、無言で隣にしゃがみ込んだモモが突然手の平を上にして、ちょうだいのポーズ。


スコップを貸してってことなんだろうけど、手伝うとか言えばいいのに。照れ屋さん!
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