それでも君と、はじめての恋を


「……あ。そっか、湊ちゃんがいるからモモが料理するようになったんだ?」

「うん」

なんて妹想いなの……!!


感動していると、葵と純がご飯をよそったお皿を持ってやってくる。


「出来た~? よそって! ハラ減ったぁ~」

「渉、ご飯このくらいでいい?」

「うん、ありがとー」


葵からお皿を受け取ると、純が鍋の蓋を取り上げて歓喜の声を上げた。


「うーわっ! ちゃんとカレーじゃんっ! 桃井が料理出来るとかウケるんですけど~」

「何で」


純のお皿にカレーをよそったモモはそう言いながら、あたしと葵の分もよそってくれる。


「いやホント今もだけど、手慣れてるもんね。料理出来るとか意外すぎるって周りもビビッて……関心してたよね」

「不完全な配慮はやめて葵!」

「ゴメン、ゴメン」と葵が苦笑していると、モモは自分の分をよそいながらポツリと呟いた。


「母親の飯を妹に食べさせるのが嫌で」

「「「……」」」


そ、そんなにモモのお母さんって……。


「あ~、桃井の母ちゃんって料理が壊滅的に下っ手くそなんだぁ。なるほどね~。なら桃井が料理出来るのも納得ぅ」


言うだけ言ってさっさとカレーにあり付こうと席に向かう純のカレーが激辛だったら良かったのに。


「まあ桃井のカレーは美味しそうだし、いいじゃん。冷める前に食べよ」


葵も席へ向かって、あたしはモモと顔を見合わせてから少し笑い、ふたりの後を追った。



全てモモが作ったというわけではないけど、野菜もお肉も柔らかくて辛さもちょうど良かったカレーはやっぱり美味しくて、葵と純も褒めていた。


学食よりも美味しいとか、妹ちゃんは桃井がいて良かったね~とか。


あまり反応を示さなくて純に怒られてたモモだけど、少し困ったように、僅かに嬉しさをのせて笑っていたことに気付いていたのは、あたしだけだと思う。
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