それでも君と、はじめての恋を
*
夕飯を済ませた生徒達は旅館に戻り、1組から順番にお風呂を使用することになった。
3組のあたしはちょうどいい時間にクラスメイトと大浴場でお風呂に入って、今は葵とロビーで飲み物を買ってる最中。
「はー……まだあっつい」
緑茶を買ってソファーに深く座りこみ、Tシャツの胸元をパタパタと扇ぐ。
「お湯の温度高かったからね」
「天然温泉なんだっけ?」
「らしいよ。肌スベスベ」
「わー! ほんとだ!」
葵の頬を触りながら他愛もない話をしていると、ちらほらと広いロビーに他の生徒もやってくる。
熱かった体も落ち着いてきて持っていたパーカを羽織りながら、キョロキョロと辺りを見回した。
「何? 桃井?」
「んー。通らないかと思って」
「いいの? スッピン見せても」
「ふわ!!」
完全にメイクを落としたのを忘れていたあたしは変な声が出て、葵は溜め息混じりに笑う。
「まあ遅かれ早かれいつかは見せることになるんだし、もう今日見せちゃえばいいじゃん」
「お、遅かれ早かれってそんな……!」
何を言おうとしてるのか察していたけど、恥ずかしくてパーカーのフードを被るあたしに葵はわざと顔を近付けて来る。
「桃井の家にお泊り、とか」
「いや――!! まだ早い! でもしたい! いつ頃出来るかなっ」
「ていうか桃井ってスッピン見ても特に反応しなさそう」
「あたしのお泊り初体験の話終わり!?」
「つまんないなー」とあたしから離れてソファーの背もたれに肘を乗せる葵が大人に見えマス。