それでも君と、はじめての恋を
「……」
「……」
恐る恐る振り向いたあたしと無言で目を合わせるモモは、きっと数秒もしない内に笑ったと思う。
可笑しそうに、柔く目を細めて。
フッと軽く鼻で笑ったモモは、恥ずかしくて真っ赤になって涙目なあたしの気持ちなんて、ほんの一握りしか分かってないんだ。
「笑うことないじゃん!!」
「あ、やっぱ今の笑ったのかー」
「ほんと貴重だよね」
森くんと葵の言葉は聞こえていたけど、あたしはモモの腕を叩いて大袈裟に「もう最悪!」と声を荒げた。
それなのにモモはまだ楽しいのか、あたしを見る瞳が優しくて顔に集まった熱は引いてくれない。
「変わんない」
「変わるよ! ていうか変わらないとか逆に失礼なんだけど!」
「……つけ睫毛がない」
「モモはそんな言葉覚えなくていいのっ!」
「……肌白い」
「し……っ! どうせいつもピンクのチーク塗ってますよ!」
「渉、今のは褒めたんだと思うけど」
呆れたような声で葵が言って、グッと押し黙る。
今モモに何を言われても、延々と反発しそう。だってあたしは、葵みたいにスッピンでも美人なわけじゃない。
校内で1番可愛いなんて言われてるわけでもない。ただ派手ってだけで、メイク落としたら超平凡な顔だし……。
「桃井もさー、別の言い方すればいいだろ。変わらないじゃなくて、スッピンでも可愛いとか。ほら早くっ!」
「え。スッピンでもかわい、い……」
スッピンでも、という言葉の後からモモと目を合わせたあたしは、更に顔を真っ赤にさせることになってしまった。
急かされて言ってしまった感はあるものの、モモは口を片手で覆って視線を逸らす。
う、うわぁ……どうしよう可愛いって初めて言われた!
いや森くんが言わせたんだけど目を見て言われた! 何これめっちゃ恥ずかしい!
リンゴみたいに赤いんじゃないかというあたしと、完全にあさっての方を向いてしまったモモ。
どうしよう、どうしよう、と思ってる内に葵が「良かったね」なんて。
本当に良かったのかは分からないけど、でもやっぱり嬉しいから良かったってことにしておく。
ていうか、もう1回言われたい。