それでも君と、はじめての恋を
「お届けもので~っす!」
「……っ」
「え!? わ、わ、ぶっ!」
純によって放り出されたモモの鎖骨が目の前まで迫ってきたと思ったら、避けきれず激突してしまった。
大きな手があたしの肩を掴んだことも、ぶつかると慌てて一歩二歩下がった足がもつれたことも。
分かっていたけど一瞬の出来事に対応しきれず、モモとふたり揃って畳の上に倒れてしまう。
ドスンッと格好悪くも尻もちをついたあたしが背中までぶつけなかったのは、モモが支えてくれたから。
「ヒュ~。やるぅ、桃井」
「……お前な……」
純となぜか周りのみんなまでニヤニヤと口の端を上げてるけど、あたしの視界はほぼモモの後頭部で占められていた。
純を見上げていたモモが振り返ると、あたしの心臓はバクッと一度大きく鳴る。
「ごめん……」
「へ!? あ、ああうん! 大丈夫っ!」
モモの胸板にぶつけた額を押さえながら、視線をあちこちへ泳がすあたし。
大きな手が背中から離れたことで、余計にモモの存在を意識してしまう。
やっべえモモ浴衣だよ! お風呂上がりだから髪濡れてるしもうどうしよう!
「ああ、メールの意味ってこういうこと?」
「んー、まあそんな感じ?」
どんな感じ!?
葵と森くんの会話に突っ込む前に純がサッと手を上げて、ものすごく機嫌がよさそうな笑顔を見せる。
「んじゃあ俺らは行くから、渉と桃井は待機でよろしく! 先生が見周りに来たら青春真っ盛りなんですって言っといてねぇ~っ」
「……っ、……」
若干身を乗り出したモモはきっと純を引き止めようとしたんだろうけど、その行為も虚しく純は女子の背中を押しながら部屋を出ていってしまった。