それでも君と、はじめての恋を
「俺がしたいと思ってるから、やってる」
「……」
「今までのこと全部」
何をしても崩れなさそうな無表情で言ったモモに、ひとつも言葉が出なかった。
頭の中で思い出が崩されて、また積み上がっていたから。
……今までのこと全部、モモが、したいと思ってるから、やってる……。
モモは、お詫びの品を受け取ってくれた。メアドも教えくれて渉って呼んでくれるようになったし、葵と純と一緒に遊んでくれた。
告白もしてくれたし、手も繋いでデートもしてくれた。
それは全部、あたしが望んだことのようで。本当は、いいよってモモが思ってくれなきゃ叶ってないことだった。
まあいいか、とか。
しょうがないな、とか。
そういう時もあるのかもしれないけど、ふたりだからできるんだ。
あたしが強要したんじゃない。
あたしだけが望んでたわけじゃない。
モモがあたしと同じように、そうしたいって思ってくれたから。
――両想いって、どうしようもなく幸せだ。
「あー……へへ。や、何か嬉しくて」
頬が緩んできたあたしを見ていたモモにそう告げて、意味もなくほんの数センチだけ前へ座り直す。
テーブルに置いた両手を組んだり、派手なネイルを見つめたりすることで今のあたしは照れくさいんだと気付いた。
隣にいるモモと会話するにはもう少し時間が掛かりそう。
ただ嬉しいとか照れくさいとか、そんなふわふわした気持ちに心を委ねてるだけで特に何かを考えてるわけじゃなかった。
だから視界にピンク色が入ってきた時も、普通に視線を向けてモモだと認識しただけだった。
顔が近いと気付くまで、きっと1秒もなかっただろうけど。