それでも君と、はじめての恋を


――え!?



目を見開いた時にはもう、モモの手はあたしの頬に触れていたかもしれない。


ドッ、と鼓動が大きく鳴り始めたのも同じ時かもしれない。


モモの顔が、本当に目の前にあって。少し近付いた瞬間、あたしの体は硬直していたのに頭の中は完全にパニックを起こしていた。


ちょ、待っ、え!? 何!? まさか…………キス!? 今!?


ドッ、ドッ、と心臓の音がうるさくて、息も止まったあたしに首を傾げてグッと近付いてきたモモにぎゅう、と目を瞑った。


ぎゃぁああああああついに―――!!!と心の中で雄叫びを上げながら。



「……」


――あれ? え? 終わった?


首筋に感じたくすぐったい気配にそろりと目を開ければ。


「……」


もう目の前にモモの顔はなくて、代わりにあたしの肩に顔を埋めそうなモモがいた。


……ん? う、項垂れてる?
何でそんなところにいるの、モモ。


ていうかキ、キス……してないよね?



「…………ごめん」


ぐるぐる考えてる内にモモの声が耳に入っても、どうすればいいのか分からない。


ごめん、って……その、できなかったことに対して、ですヨネ?


「や、謝らなくても……」


いい、けど。

どうしよう。目を瞑って受け入れ態勢万全だったあたり、それなりに羞恥心にまみれてるんだけど。


「ごめん、ほんと」


パッとあたしから離れて顔を背けたたモモに、謝らなくていいともう一度口にすることはできなかった。
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