それでも君と、はじめての恋を

――――
――――――……


「……あったまった?」


とりあえずお風呂に入ってからと言ったあたしは、部屋へやってきた葵に声を掛ける。


「うん、かなり。貸してくれてありがと」

「……浮気されたって、どういうこと」


せっかく微笑んでくれたのに、直球で投げ掛けられた言葉に葵は苦笑した。


「どうもこうも、そのままの意味でしょ。同じ大学、同じサークル、同い年の子と」


40分近くお風呂に入っていた葵の瞳には、涙なんてない。


「ドライヤー借りていい?」

「……どうぞ」


テーブルを挟んで向かい側に座った葵は、近くにあったドライヤーを手に取って髪を乾かし始めた。


使うだろうと思って化粧水や乳液もテーブルに置くと、葵は微笑みだけでありがとうと伝えてくる。


……浮気相手が七尋くんと同い年なら、大学2年生。あたし達より3つ年上ってことになる。


同じ大学で、サークルも同じ、って……まるで近くにいない、高校生の葵を否定されたみたい。


そもそも、なんで? という疑問が1番にくる。


うまくいってたじゃん。たまに喧嘩することはあっても、仲良くしてたでしょ?


葵と七尋くんが付き合って、1年経ってる。1年記念日はふたりでお祝いしたでしょ?


プレゼント交換した指輪だって、あるのに。葵の薬指に、数日前まではついていたのに――……。



「なんで?」


髪を乾かし終わった葵は、あたしが聞いても微笑むだけで。化粧水のボトルを取って、鏡を見ながら肌になじませていく。



「なんで、浮気されてたって話になるの?」

「なんで……。今日、昼から遊ぶ約束してたって言ったじゃん」

「うん、聞いた」

「ドタキャンされて」

「……また?」

「そう、また」


化粧水から乳液にうつった葵はあたしと目を合わせず、鏡の中の自分と向き合いながら話を続ける。
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