それでも君と、はじめての恋を
「俺にはよく分からないことだけど、何となく優木に話したほうがいいって思ったから、そう言った」
「うん……」
「でも池田は、ダメだって」
「……どうして?」
「言ったところで信じない」
……うん。信じない。
だって七尋くんは、そんな人じゃない。その頃のあたしと葵のイメージでは、だけど。
「仮に話したとしても優木は確認するだろうし、向こうは知らないって言うだろうって。それで険悪になったりするなら、言わないほうがいいって」
純……普段はあんなに、おちゃらけてるくせに。
「……一時的にハマッてるだけで、いつか終わるって池田は言ってた。もうすぐ夏休みだし、お互い逢う機会も増えるだろうから、今告げ口するのは嫌だって」
「様子見したかったってこと?」
「うん。それで、大丈夫そうなら黙ってるに越したことはないだろ、って。バレる前にやめてくれれば、わざわざ優木が知る必要もないって言うから……俺も、それが1番いいと思った」
「……」
膝を抱いていた腕を解いて、モモと同じようにベッドに寄り掛かった。行き場を失くした手はお腹の上で組んで、そこへ視線を固定する。
……あたしも葵も純に拳ぶつけたり、叩いたりしたことあるな、なんて思った。
純はその度に痛いとか暴力反対って言うけど、それだけ。女の子に怒ってるところなんか見たことない。
「モモは、純がどうやって色んな女の子と付き合えてるか知ってる?」
「……ひとりに絞らないって、公言してるから」
「そう。でも、いつかはひとりに絞るかもしれないから、って言ってるの。理解出来ないけど、それでもいいって女の子が寄ってくるの」
だから純は、七尋くんの味方をしてるのかと思ってた。
浮気くらい何だよって思ってるから黙ってたのかもしれないって、勝手に勘違いして怒ってた。
普段、純がどれだけ女の子にダラしなくても、あたしはやめなよなんて本気で言ったこともないのに。
「池田は、何も考えてなかったわけじゃない」
「……」
『七尋くんが浮気してたこと知ってたのに、黙ってたじゃん。それって結局どうでもいいってことじゃないの? ふたりの問題ってモモは言ったけど、干渉しないで傍観してるって言ってるようなものじゃん』
あたしがそう怒ってる理由を話した時、モモは『それだけ?』って言った。あれは、それが何?ってことじゃなくて、まだ他にある?ってニュアンスだったのかもしれない。