それでも君と、はじめての恋を


「期待してるからな。が、頑張れよ!」

「じゃあ矢吹、俺は期待してるからな」


桃井くんに言う先生の期待と、あたしに言う安部ちゃんの期待の差を感じながら生返事をして、桃井くんの後ろ姿を見てから職員室を出た。


桃井くん、頭良いんだ。そういえば何かそんな噂があったな……。


職員室を出てすぐに廊下の壁に寄り掛かって、あたしは桃井くんを待ち伏せする。


久しぶりに見かけたから話したくて、本当に頭がいいのか興味があったから。


ほどなくして職員室のドアが開き、桃井くんが出て来て目が合う。桃井くんは一瞬止まって、ドアを閉めた。


「久しぶり! 今見てたんだけど、桃井くん頭いいんだね」


あたしは手に持つプリントの存在をすっかり忘れて、桃井くんに話しかけてしまう。


それに気付いたのは、桃井くんの視線が確実にプリントに注がれていたから。


「「……」」


消えたい。

ほんとに消えたい!


何4点とか取ってんのあたしのバカ! バカだからこの点数なんだけどさ!
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