お前じゃない
 ハルは窓から差し込む太陽の光で目が覚めた。いつの間にか眠っていたのだろう。すぐに窓から外を見ると、天気は回復し、まるで何も起こらなかった様に思えた。部屋を出れば、みんながいて……とハルの想像も虚しく、目線を散らばったままのマンガ本に向け、現実に引き戻された。死んでしまった同僚達の事を考えながらも、生き残った三人で、無事に帰れればいいなと思った。 

 深呼吸をし、着替えを済ませると部屋を出て一階に下りた。

 しかしロビーには、まだ久美子も、ポッコリ殿も居らず、シーンと静まり返っている。その静けさが、ハルを余計不安にさせた。もう一度、深呼吸をし、ロビーの時計を見ると、午前十時時を過ぎていたので、ハルは、二人が既に食堂に行ってるのではないかと思い、とりあえず、キッチンにヨーグルトを取りに行ってから食堂へ向かう事にした。

 ハルは冷蔵庫を開け、ヨーグルトを取り出しながら、食堂からは話し声一つしない事に気付いた。 

 あれ? まだ誰も起きてないのかな? それなら食堂で、ヨーグルトを食べながら待ってようと思い、ハルはヨーグルトとスプーンを手に持ち、食堂へ続く扉を開けた。
< 30 / 36 >

この作品をシェア

pagetop