お前じゃない
 気が付くと、そこはどうやら病院のベッドの上だった。

 ハルの周りには、スーツを着た見知らぬ男が三人立っており、すぐに医者を呼んだらしかった。すぐに駆けつけた医者が何やら説明をし、男三人が安堵していたのをハルは呆然と見ている。


「相沢さん、相沢春一さん、話せますか?」


 その男三人は刑事だと名乗り、ハルに警察手帳を見せた。

 ハルは丸一日、眠っていたらしい。

 夢じゃなかったんだ……。本当にみんな死んでしまったのか。
 その時、ハルはぼんやり思っていた。

 刑事達は別荘を訪れ、事件を把握している様だった。

 一通り事情を聞かれたが、ハルの所持品からポッコリ殿の遺書が残っていた為、刑事達はその内容を見てハルに同情していた。

 こうしてハルはたった一人だけ助かったのだ。

 その後、ハルは会社を辞め、地方の田舎に帰り、実家の酒屋を継いだ。

 別荘での出来事はまるで悪夢の様だった。大切な仲間を失い、それでも僕は生きている。そして、これからも生きていくのだろうと思い、ハルは遠い目をした……。
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