お前じゃない
「おいおいハル! 俺の作ったこのスープはな、何時間も煮込んでるんだぞ!」


 社長も笑いながらそう言った。


「社長、次の企画の話しなんですが」


「おい、ポッコリ殿! 食事中に仕事の話しはよせよ。みんなここでは仕事を忘れて、楽しく過ごす目的なんだからな」


 突然、ポッコリ殿が仕事の話しを始めたが、社長が露骨に嫌な顔をして途中で遮った。一瞬で場がシーンとしてしまった。

 しかし、二宮はさっきからどの会話にも加わらず、黙々と料理を食べている。


「そうだ、社長! 私ここへ来る途中、年代物のワイン買ってきたんです。後でみんなで飲みましょうよ! あっそれと、ハルからついでにって頼まれたヨーグルトも、たくさん買ってきたわよ」


「何だよハル、久美子さんにヨーグルト頼んでたのか? ちゃっかりしてるなぁ」


「ここへ来る途中、久美子さんがワイン専門店に入って行く所だったから、声かけてついでにヨーグルト頼んだんだった」


「お前、ワイン専門店にヨーグルトは売ってないだろ! 久美子さん、わざわざ違う店に買いに行ったんじゃないですか? すみません」


「ハハハ! いいのよ。だいちゃんが謝る事ないわ。ハルの事ですものハハハハ!」


「ハハハハっ! 本当にハルは相変わらずだなぁ。後で久美子さんのワインみんなで頂く事にしよう」


 久美子とハルとだいちゃんの話しを聞いて、社長は豪快に笑った。
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