虹の都へ

おかしな気持ち

あたしが次に名刺入れの存在に気づいたのは、家に帰ってきた時だった。

部屋に入って何気なくポケットを触った時、
「あ」

名刺入れが入っていたことに気づいた。

すっかり忘れてた。

ポケットから出し、やけにシンプルなそれを見つめる。

あの人、困ったのかな?

ビジネスマンだし、名刺は必需品だよね?

もしかしたら、今日は商談……打ちあわせとでも言えばいいのかな?

まあ要は他の会社の人と会う約束をしてただろうし。

やっぱり、困ったよね?

なんて思いながら、名刺入れを見つめた。

「瑞希」

ガチャッとドアの開く音がしたのと同時に、虹が入ってきた。
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