私の好きな彼女、私を愛した彼氏

私の口から漏れた思わぬ一言にアカネが目を見開く。


「…何よ、急に。」
「いや…。何か変な感じってか…照れくさくて。」
「照れくさい…って。そんな事言われると……何か、意識しちゃうじゃない。」
「あ…っ、ごめん。」



――自分で蒔いた種なのに収穫出来ない―――っ。



私達はただ黙って視線を逸らした。
窓から差し込んでいた夕日はその姿を山の向こうへと隠し、辺り一面を夕闇が支配する。
雨も降ってきたようだ……。
まさに相乗効果。
この微妙な空気と合わさって何とも言えない―――。




改めて考えてみたら…。
アカネって私のタイプだったりするんだよね。

もちろん彼女が男性なら…ってのが前提だけど。
肩まで伸びた艶やかな黒髪にすっと通った鼻筋。
眼は切れ長で鋭く…細く鮮麗された指先はスラッと伸びた身長に比例して見惚れてしまう。
そして、たまに見せる笑顔は天使のように可愛く清らかで…。
正直に言って女にしておくのには勿体無い風貌だった。





どうしよう――――。





私、今ドキドキしてる。




尋常じゃない速さで脈打ちだした心臓。
自分に訪れた不可思議な現象に戸惑いを隠せなかった。
それでもアカネから目が離せない。


…と、アカネが突然私に視線を戻し――――。