キスミー★チョコレート
「きゃっ…」
分厚い、人の鉄壁を勢いよく抜け切り、その反動でよろめいてしまった。
「―っと!危ないっ」
硬い床に転ぶと思ったら、誰かが支えてくれて
間一髪、あたしは転ばなくてすんだ。
背後の群衆から一際大きな黄色い叫び声が聞こえる。
「大丈夫?あやかちゃん」
え…この呼び方…
「わ、わ、りっくん!?」
顔を上げるとすぐりっくんの顔があった。
…近いっ!
りっくんの瞳の中にあたしがくっきりと映っていて、
もう1人の自分とバッチリ目が合った。
「あっ…えっと、あの…」
あたしがりっくんの胸の中で動揺するのとは反対に、りっくんは何だかご機嫌。