angel or devil




「もういい!!!!」



さっきまでの震える声とは正反対の

奇声のような綾香の声に驚き

綾香に視線を戻すと



「!!!!?」


綾香が肩に掛けていたバッグから、太陽の光りをギラリと不気味に跳ね返す





銀色の鋭い刃物が顔を出した






「やめろ………」




「あんたなんか………あんたなんか………」



その刃物の先端が



この俺に向けられていることなど



刃物から放たれる太陽の光りで見えなくとも





すぐにわかった





「矢崎!謝れよ!」



「ごめん………!!落ち着けって!!そんな事してもしょうがないだろ!!」



「……………」



刃物を両手で握り締め、震える足を一歩一歩踏みしめ近付いてくる綾香




ずっと俺に向けられたままの鋭い先端




「……!!おい!!やめろ………やめろ!!!!!」




俺の足は動いてはくれない





「ねぇ!!君も落ち着いて!!話せばわかるって………!!」



なだめるように話す誠さんの声を
俺の左耳は拾った






「頼むから…………!!」





「やめろ………!!」




< 245 / 287 >

この作品をシェア

pagetop