天使の羽衣
第一章 宝の地図
カリカリと取り憑かれたようにノートをとる学生を横目に、俺は絶望感を感じていた。

7月。うだるような暑さと、耳にまとわりつく蝉の鳴き声が、さらに気分を悪くする。

先ほどから、講義の内容がさっぱり理解できないのだ。

まるで暗号のように、教授の言葉が右耳から入って左耳から抜けていくのがよく分かる。

「連続体力学」というのが、どうやらこの講義の名前らしい。

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