天使の羽衣

*****

『杉浦健一』

「三星天文台利用許可証」と題された用紙に、俺はフルネームを記入し、担当の教授から天文台のカギを受け取った。

教授に軽く礼をし、足早に研究室を立ち去ろうとする最中、

「おい、杉浦」

と、教授に呼び止められた。

「はい」と振り返る。

「お前が部活に精を出すことに、とやかく言うつもりはないけどな――」と、教授は語りだす。

「卒業単位のほうはどうなんだ。成績は芳しくないし、授業にだってあまり顔を出さないじゃないか」

まったくその通りだと思ったので、俺はすみませんと素直に謝る。

「しかしまぁ、なんだ。お前が天文学に興味を持ち出したのは、私もいいことだとは思うから、黙って見守ろうと思う」

「ありがとうございます」

教授の言葉は、うれしい限りではあったが、

『実は天文台に宝の地図が隠されていて、それを探すために…』

なんてことは口が裂けても言えなかった。

俺はもう一度丁寧に礼を言うと、研究室を後にした。

帰り際、教授が後ろから、

「来週試験だから、お前も受けろよ」

と言ったような気がしたが、聞こえなかったことにする。

< 48 / 52 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop