天使の羽衣
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『杉浦健一』
「三星天文台利用許可証」と題された用紙に、俺はフルネームを記入し、担当の教授から天文台のカギを受け取った。
教授に軽く礼をし、足早に研究室を立ち去ろうとする最中、
「おい、杉浦」
と、教授に呼び止められた。
「はい」と振り返る。
「お前が部活に精を出すことに、とやかく言うつもりはないけどな――」と、教授は語りだす。
「卒業単位のほうはどうなんだ。成績は芳しくないし、授業にだってあまり顔を出さないじゃないか」
まったくその通りだと思ったので、俺はすみませんと素直に謝る。
「しかしまぁ、なんだ。お前が天文学に興味を持ち出したのは、私もいいことだとは思うから、黙って見守ろうと思う」
「ありがとうございます」
教授の言葉は、うれしい限りではあったが、
『実は天文台に宝の地図が隠されていて、それを探すために…』
なんてことは口が裂けても言えなかった。
俺はもう一度丁寧に礼を言うと、研究室を後にした。
帰り際、教授が後ろから、
「来週試験だから、お前も受けろよ」
と言ったような気がしたが、聞こえなかったことにする。