嘘愛歌
…と、私の住んでいるアパートの入口前に堂々と黒光りしたベンツが横付けられている。
…………目立つ。
目立ちすぎている。
閑静な高級住宅街にでも
停めてありそうな代物が、
貧相なボロアパート前に…。
正直いってこんな築38年のアパートに
そんな金持ちオーラをプンプン醸し出している人と関係をもってる人なんていないと思う。
…有るとすれば借金の取り立て?
怖い怖い。
余り関わりたくないが、何せマイアパートの真ん前にいるもんだから、通らない訳にもいかなくて、恐る恐る近づくと
ブラックスモークが貼られた車窓が
ゆっくり開いた。
「みっけた」
「…えっ」
驚きすぎて、反応がワンテンポ遅れてしまった。
そこにいたのは、いかつい兄ちゃん。
…ではなく、一昨日関係を持ったあの男。
30万円をポンと出せる人の仕事はもちろんそれなりのものかと思っていたが
まさかヤの付くお仕事の人だとは思わなかった。
っていうか、知ってたら絶対関係を持たなかった。
いや、別にヤの付く職業だと直接本人に聞いたわけじゃないが、
大方その関係の職業だろう。