《短編》聖なる夜に
やっぱりエイジは、追いかけては来なかった。


当然だろう。


だってあたしは、“好き”とか言っちゃったわけだし。


だから、重いんだ。


だけど、追いかけてこないのだって、シュミレーション通りだから。


だから、傷つくことはない。



ないはずなのに、何でか涙ばっか出てきて。


やっぱりまた、トイレに篭って声を殺した。



こんなに好きだった、自分が嫌い。


こんなに好きにさせた、エイジが嫌い。


でもやっぱり好きだから、そんな自分が嫌いで。


結局あたしは、エイジが好きなんだ。


別れてから、再確認した。


だけどもぉ、戻らない。


だってもぉ、戻れないんだもん。



あの人は、追いかけてくることも電話を掛けてくることさえもなかった。


メールだって、もちろん送ってきてはくれない。


もしかしたらきっともぉ、次の子を見つけてるのかもしれない。


あたしの時と同じように、また強引に言ってるのかもしれない。


そんなことを考え出すと悲しくなって、また涙が溢れた。



予鈴のチャイムが鳴って、涙を拭いて教室に戻った。


真っ赤な目をしていたあたしに、全てを悟ったようにミチは、何も言わなかった。



“頑張ったね”


そんな言葉にまた、思い出したように涙が溢れてきて。


クリスマスイブなんて、大嫌いで。


全然幸せなんかんかじゃない。


だけどあたしは、幸せになるために近藤くんに言わなきゃいけないんだ。


“別れてもエイジが好きなの”って。


“だから、ごめんなさい”って。


そんな風に、決心した。

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