《短編》聖なる夜に
不信感
“次の授業、サボる”


そんなメールが入っていた。


なので、あたしも。


行く場所は大体、誰も来ない非常階段。




「―――おはよ。」


『おー。』


ポケットに手を突っ込んで身を縮めて近づくあたしに、エイジは食べていたパンを持ち上げて声を上げる。


その横に腰を下ろし、あたしは次の言葉を掛けた。



「…昨日の夜、何やってたの?
電話したけど、出なかったじゃん。」


『…掛け直した時、亜紀だって出なかったじゃん。』


「…そりゃ、あんな遅くに電話くれても、寝てるって。」



最近のエイジは、夜に電話しても出ないことが多い。


待ってるのもシャクだしってことで、あたしは寝る。


で、朝起きると着信があるんだけど、時間は大体夜の11時を過ぎた頃。


一体、何をやってるんだか。



『…で?
何だったの?』


「…別に用なんてないよ。
暇だったから電話してみただけだし。」


『ふ~ん。』



って、またそれで終わらせるのか。


もぉ認めるけど、あたしはコイツが好きだ。


でも、コイツはそうじゃないっぽい。


だけど“軽い付き合い”の約束だから、あたしは何も言わない。


だって、傷つきたくはないんだもん。


“何やってたの?”って、聞くのが怖い。


< 9 / 34 >

この作品をシェア

pagetop