雪姫炎上
「では、烈。貴様は不敬罪だ!畠中家第十八代当主恵彰様が御息女、雪姫様におかれては、常に市民と親しみ、誘客にも一役買いたいとの、殊勝なお心掛け。されど、警備の面からも、勉学を最優先せねばならぬ高校生のお立場からも、それは容易に叶わず、代理として、御着ぐるみを考案されたのだ。
これを着た瞬間より、貴様は姫!姫のお優しく、高貴な御心掛けまで、演じてこそのスーツアクターであろう!
恐れ多くも雪姫様の分身を暑いだの臭いだの…無礼にも程がある!」
立石に水の説教を、烈と呼ばれた少年は耳をふさいでやり過ごした。
「だったら、お前がやれよ!」
「身長が合わないのだから、私では入れぬ。」

静(身長179cm)は、烈(身長160cm)を見下ろした。
「…てめぇ…」
逆鱗に触れられた烈は、いきなり静の、サラシでも隠し切れない巨乳を鷲掴みにした。
「…なっ…!」
「着ぐるみに入れないなら、影武者にでもなって、お前が客寄せしたらいいだろ。静様?」

げし!
静は烈の腹を蹴りつけた。
不安定な着ぐるみ故、ボヨンと倒れる。頭を壁にしたたかに打ち付けて、烈は一瞬意識が飛んだ。

「ああ!雪姫様のお腹に足跡があ!申し訳ありません、雪姫様あ!」
静は必死で、着ぐるみの腹を撫で付けた。

深見 静、22歳女性。黒髪をポニーテールに結い上げた様は、凜として美しい。観光課に配属された新卒の市職員である。
雪姫のねえやとして、長年仕えてきた為、忠誠心は半端ない。
身長と男と見紛う端麗な顔立ちは、コンプレックスでしかないが、女物を着ても、女装にしか見えない為、大抵は男装している。

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